「___おやおや、誰かと思えば十緒美嬢じゃないか。」
「ん〜?……そういうあんたはノイくんか。おひさ〜。」

ピエロくんの姉妹

「あれ?君たち知り合いだったの?」
僕が二人に尋ねると、もう一人の小さな当事者が代わりに答えた。
「ノユたちとトーミは、SEPだよ」
「? あーはいはい、なるほど。」
「でも、にーやんとトーミはあんま仲よくない。」
「「ん?そんなことないよ」」
即座に否定する二人。逆にあやしいっつの。
「ふ〜ん、そうなんだ。」
まあ、大して興味もなかったので、適当にいなす。
なんでかな、ひどく退屈だ。
僕はふと、小学校時代のクラスメイトを思い出した。変わった名前ばかりの四人組。テンション高すぎたり、背が小さいくせに態度でかかったり、背が高いわりにのほほんとしてたり、モッテモテだったり。アンバランスな四人だった。逆に統制が取れていたのかな。
あの四人の中で僕が少しだけ仲良かったのは、モッテモテのヤツ____九姿、だっけか。そう、九姿。九姿一六。アイツとはまあまあ仲良かった。
虎は、彼のこともあんまり好きじゃなかったみたいだけどね。
なーんて、僕が思い出に浸っていると、唐突に虎が聞いてきた。
「なあオイ、家族から連絡とかあったか?和弘。」
「え?ああ、姉貴からってこと?」
「そうそう。姉だけじゃなくてもよぉ、おふくろさんとか。」
「いやあ、特に何も。」
「マジか?あのブラコン女から何も来てねぇとは……ちょっと驚きだ。」
「え?ちょ、ちょっと待って、お姉さん居るの?」
少し慌てた様子で聞いてきたのは、御影。
「うん。千弘。双子なんだけどね……ああ、姉貴も居るよ。」
「え?二人も居るの!?」
「うん。面倒なヤツでね。これが。」
僕は二人を思い出してため息をついた。
美弘。僕の姉。まあ弟の僕からいうのもなんだけど____異常なまでのブラコンだ。ちょっと怖い。というか怖すぎる。僕が歪んでいるのを知っていて、その「歪んでだ和弘を愛してる!!」だなんて面と向かって言うような人だ、頭おかしいでしょうどう考えても。
千弘。双子の妹。はっきり言おうか?腐女子。おかげで僕は男友達を家に呼べなかった。何言われるか分からない。いや、何させられるか分かったもんじゃない。ちなみに、あいつが一番好きなのは虎と僕だそうで。うえ、気持ち悪くなってきた。
「___おい、大丈夫か和弘。いつも以上に目が死んでるぞ。」
「え?ああ……あの強烈姉妹を思い出して、ちょっとね、気分が。」
「……ご愁傷様。まあ、俺も実害被ってるしな、あいつらには……」
虎が珍しく遠い目をした、その時だった。
ぴぴっぴーぴーぴっ
実にシンプルかつ機械的な着信音。僕の、ケータイだ。
「? 今更、電話?」
とりあえず、ポケットから取り出し通話ボタンを押す。途端、とっても聞きたくなかった声がケータイから流れ出てきた。
『和弘っ!!!大丈夫!!!???死んでないっ!?』
『にいにー!敵のテロリストに、美形の人とか居なかった!?できればテロリスト側が攻めがいいけどにいにが攻めでもいいよ!!』
「………とりあえず、二人とも黙ってくんないかな。」
ああ、なんて事だろう____電話は僕の姉妹からだった。
「うげ、その声千弘か?」
虎が怖じ気づいたように呟く。その途端、千弘のテンションが急上昇した。
『きゃーーーーーーー!!!その声輪払さんだよねえ!!??ちょっ閉鎖空間で二人きりとかマジ萌えるんですけどー!!!』
「いっぺん死ね、千弘。二人きりじゃないから他にも沢山人居るから。」
「うわあ、強烈……」
はっきりと御影がドン引きしている。
「うっひょー、すごいキャラだねー」
十緒美さんは面白そうに笑っている。ちくしょー、人ごとだと思って。
『え、なになに!?他にも男の子居るのっ!?』
「いやまあ、居るけど……」
『ひゃっほうにいに総受けフラグじゃん!?うわああああマジ見たいんですけどその場に行きたいんですけど!!』
「千弘、帰ったら殺す絶対殺す頭潰してやるから覚悟しろ」
「何言ってるの?和弘は私のものよ。」
さあ、うっかり御影がそんなこと言っちゃったものだからさあ大変。
『____え、何?冷めるんだけど。え?誰?』
「私は、甘木御影。和弘の彼女よ。」
『うっわ引くー!ねえねー、和弘の彼女とか言ってるよこの女。』
「そうだよ。御影は僕の彼女。」
『それは聞き捨てならないわねええええええええええ和弘!!!!お姉ちゃんそんなの認めないわよ!!ちょっと、御影とかいう女!』
「何よ?」
『和弘は私のものよ!!手出ししないで!!!』
「いつから僕が姉貴のものになったんだよ」
『そうだよにいにはねえねのものじゃないよ!!輪払さんのものだもん!!』
「俺ぁいらねぇよこんなヤツ!!」
『んもう、照れちゃってー♪』
「照れてねええええ!!頼む永久に黙ってくれ千弘!!」
『きゃっこわーい♪』
「……死ねばいいのに。」
「何なのこの人達!?」
「だから言ったでしょ面倒なヤツだって。あーあ、双子なんだからテレパシーとかで殺せないのかなってか死ねよ本気で死ねよ。」
『和弘!!考え直しなさい!!あなたには私が居るでしょう!?』
『輪払くんが居るでしょー!!ってかその新しく出会った男の子の情報kwsk』
「誰が言うか。つーか姉貴、姉貴のことは好きだけどそれは家族としてであって」
『好きなの!?好きなのよね!?私も愛してるわ和弘ーーーーーーー!!』
「ごめん前言撤回するわ。」
「あーあの、ひょっとするとひょっとしてその新たに出会った男の子って、私のことかい?」
「あのさ、ノイ君ちょっと黙っててくんない?本当に空気読めないな。」
『え?なになにノイっていうの!?ちょ、自己紹介してよノイ君!!』
「あー、えーっと、和弘くんとは仲良くさせてもらってます、戸羊ノイとい____」
「は?仲良くはしてないから。」
「ちょっひどくないかな!?」
『あーなるほどノイくんは受けだねー』
「へ?受けって何だい?」
『受けっていうのはねー」
「うわあああああやめろ説明すんな吐き気がする。」
「君付けってのは、目上の人に対してどうかと思うよ君。私は和弘くんより年上なのであって必然的に君より年上」
『きゃーーーー年下攻めktkr!!にいに年下攻め似合う〜♪あっでも一番はやっぱ誘う受けもとい襲い受け』
「黙れええええええええええええええ千弘いっぺん死ね!!!!!」
ブツッ
ツーツーツー
間。
「………はぁ、はぁ、はぁ………あの野郎殺す帰ったら殺す姉貴は黙らせる絶対黙らせる病院に行けアイツらつか病院が来いチクショウ。」
「_____和弘、大丈夫?」
「………ごめんね御影、あの女が失礼なことを、」
「いいのいいの、というか口調がめちゃめちゃよ?本当大丈夫和弘………ねえ、輪払も大丈夫かしら。」
御影の声にふと虎を見れば、なるほど口に手を当ててしゃがみ込んでいる。
「____大丈夫?虎。」
「すっげえ吐きてえ……今すぐにでも……ちょ、トイレ行ってくる……」
「………行ってらっしゃい。」
ふらふらと教室を出て行く虎に不安を覚えつつ、僕はケータイを放り投げた。
「うーん、まあでも私は、妹さんの言ってること分かる気がするなー。」
何気なく、十緒美さんがとんでもないことを言いやがった。
「は、はあ!?」
「いやーだって、私は美しいものが大好きだからねえ、虎くんも和弘くんも見目はすこぶるいい訳で、だったら特に問題はな」
「大有りですよっ!!第一、僕には御影という立派な彼女が居る訳で。他の人なんて、男だろうが女だろうが有り得ませんから。」
「………和弘。あなたってどうしてそう無自覚に男前なの。大好きよ。」
「え?ああ………ありがとう。僕も大好きだ。」
なんだかよく分からないけど、とりあえずいいムードになりかけたその時。
ぴぴっぴーぴーぴっ
ぽちっ
「いっぺん死ね!!!!!!!!千弘!!!!!!!」

ギャグですから。
ども、ソヨゴです。和弘の強烈姉妹登場しましたー和弘がこんなにペース乱されるのは多分コイツら相手だけですね。


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