ふうっ、と短く、深いため息をついた。覚悟を決めるのは難しいことだったが、そろそろ中へ入らなければ。
コンコン。二回、ノックする。
「先生。」
「___あぁ真日君。入りたまえ。」

救えない契約

失礼します。 一言言ってドアを開ける。馬鹿みたいに緊張してんなぁ……何やってんだ、俺は。
「よく来たね、」
「呼んでおいてよく言います。」
「はは、手厳しい。」
教授は人好きのしそうな笑顔を浮かべた。きゅっとイスを回し、立ち上がって俺に近寄る。
「覚悟は決まったかな?」
「____決めるしかないでしょう。」
決めるしか、ない。頭の中で繰り返す。 そうするしか、ない。
「そう……真日君、意識はあった方がいい?」
「は?」
「脱がされる時、だよ。」
「…………ない方がいいです。」
教授は愉快げに笑って、俺に錠剤を二粒手渡した。 それ飲めば眠れるよ。
「変なものじゃないですよね?」
「媚薬効果なんてないさ。安心して飲むといい。」
安心、と言ったって。
柳を使って脅すようなヤツ、どうやって信用しろと?
「じゃあ。」
水なしで一気に飲み込む。嚥下してしばらくすると、くらり、意識が揺らいで。
ドアに思い切り身を預け、ずるずると、落ちていく。意識が途切れるわずか一瞬、教授の手が俺に触れるのを感じた。


ぴくっ、と、脚が震えて目が覚める。意識がはっきりした瞬間に声が漏れた。慌てて堪える。
「目が覚めた?真日君。」
「くぁ、ぁ……はい。」
何をされてるんだ?顔を上げて確かめれば、慣らされている最中だった。
「今、慣らしてるから。入れられたことないでしょ?」
「あ……ふぁ、っ、」
「そろそろ入るかな。」
人差し指が一本、入り込む。かすかな痛みで俺は呻いた。
「痛い?少し我慢してよ。」
声が愉しげだ。この野郎、と思う気持ちを無理矢理抑える。逆らえる状況ならぶん殴ってんのに。
指が内壁を這うようにまさぐる。慣れない快感。鼓動が痛い、速い。
「…っ……ひぁぁっ!!」
突然、貫くような快感が頭を揺さぶった。いきなりのことに戸惑っていると、教授がにやぁ、と嫌な笑みを見せて。
「____前立腺、みーつけた。」
かり、かり、爪が何度もひっかいて、その度俺はあられもない声を出した。おかしくなりそうだ、柳はいつも、こんなに、こんなに、
「かわいい反応するじゃないか。」
「ふぁぁっ、ひっっ、ああああっ、あぁ、」
「もっと堪えるかと思ったよ。それとも、耐えきれないほどきつい?」
言葉を発することができずに、俺は黙って頷いた。口を開くと喘ぎしか出ない。
「へぇ、ココってやっぱり気持ちいい?」
「ああぁ、んぁ、ぁ、ひゃああ、あっ、」
ちくしょう、どうにかならねぇのかよ……声が、堪え、られない。
ぞくりぞくりと背筋がしびれて、頭がぐらぐら不安定になる。壊されそうだ、やばい、くそっ。
指がもう一本、入り込む。何か考えようとすると快感がかき乱された。 どうでもよくなりそうで、怖い。
「二本入ったね。じゃあそろそろ突っ込めそうかな?」
「ふっ……ぁ、センセ、」
「入れるよ」
待ってください。そう言おうとしたのだけれど、教授は答えを聞かずに俺の中に滑り込んだ。
「あああ、あっ、あぁっ、」
「思ったより喘ぐね、意外だよ。まぁ初めてなら無理もないかな?」
「あ、うぁ、喘がせっ、てん、の、センセイ、でしょ、」
「それもそうだね」
顔を見られたくなくて、両腕で目元を覆う。内壁がこすられる度背が反って、うざったい。仰け反ってしまう。
「顔見せなよ。」
教授はそう言って、俺の腕に手をかけた。抵抗はしたが、さして意味もない。簡単に外されてしまった。
「……真っ赤だ、そそるね。」
「っ……知りません、そんなの。」
「口だけはまだ生意気だな。____ちょぉっと立場、思い返してみてごらん?」
立場………ね。 クソ野郎。
「___柳には手、出さないでください。」
「そうだよ……君、お願いしてる立場だろ?」
あぁ、殺してしまえたら。
「ふぐっ、ぁ、あ、センセ、やめ、」
擦る動きが激しくなる。ぐちゅぐちゅと音が立つ。 苦しい、恥ずかしい、クソッ、柳のことさえなけりゃ、こんなヤツ、こんなヤツ____
「真日君、具合はどう?」
「っあ、やだ、ひぁぁ、」
「そんなきもちい?」
ふざけんな死ね、死ね、死んじまえ、しね、きもちい、しね、しんじまえ、きもちいい、
「ふぁぁ、ああ、やだ、もういやだ、」
「大丈夫かい?おかしくなってきてるよ、真日君。」
「だれ、の、せいで、こんなぁっ、あ、やだ、センセイ、いやだ、」
緩んだ声しか出てこない。苛立たしい。怒鳴り散らしてやりたいのに、力が抜けて、抵抗できない。
先生の舌が肌に這う。ぬるりとした感覚。いくら初めてだからって、擦られただけでこんな感じるの、おかしい。やっぱあのクスリ媚薬だったな、この下衆が。
「ひぃ、ぁ、センセ、舐めないで、くださ、」 「ん? 乳首いじってる訳じゃないでしょう、それともいじってほしいのか?」
「そんなワケ、」
だったら、お望み通りに。 教授は俺の言葉を無視して乳首を口に含む。
くりくりと、口の中で弄ばれる。もう片方は指でいじくられてる。 頭飛びそうだ、誰か、いや、助けなんて……呼ぶ訳には。
ちゅぷちゅぷといやらしい音、悔しくてたまらない、快感でおかしくなりそう、乱れてたまるか、崩れてたまるか、屈しねえぞ、うっぁ、だれか、いや、
「__っは、ちょっと、キツくなってきたな。」
教授はやっと口を離した。湿った息をついている俺に、教授は愉快そうに笑いかける。
「乱れてるねぇ。」
「……はぁ、ぁ、……んっ、ぁ………」 教授は再び腰の動きを激しくして、俺はまた飛びそうになって、あ、いや、やだ、くっそ、あああっ、あぁ、やだ、やだ、センセイ、
「………そろそろ、中に出すよ、」
「ひっ、やだっ、センセイやめてっ!!」
涙目を隠そうともせず叫んだ瞬間、____液体の感覚が、中に、吐き出された。
「_____っ、」
泣いてなんてやらない、泣くものか、コイツ相手に、こんな、こんなクソ野郎相手に____泣くものか。
「………強情だなぁ。」
後始末、してあげる。 ため息混じりにそう言って、教授は俺の中から出た。


「美澤」
「_____え、柳?」
何でいんの?
純粋に聞いてしまった。先帰っていいぜって言ったのに……何で。
何で残っちゃうんだよ。
「長かったな。居残りか?だから普段から講義は聞いておけと、」
「うん。___そんなようなもの。」
うち来る? 柳を抜き去りながら、尋ねる。柳は立ち止まったままだった。
「? 柳?」
「美澤、お前………」
何か、隠してないか?
「…………え?「隠してなんかねぇよ?何も。」」
あ、重ねてきた。
「___そう言うと思った。何だよ、何があったんだ?目が疲れきってる、何もなかったなんて、嘘だろう。」
「……嘘じゃないって。」
「何で隠すんだ? 俺にも言えないことなのか?俺は………お前の大事な人じゃないのか?」
「はは……恋人って言えばいいのに。」
かわいいなぁ。笑って返すと、柳は切なげに顔を歪めた。 誤魔化すな。
「____大事だから言えねぇんだよ」
「え?」
「もう帰ろうぜ、柳。………疲れちった。」
美澤。 柳はまだ何か言いたげだった。俺はそれをわざと無視して、歩いていく。
「………美澤。」
背後で苦しそうな、柳の声が聞こえる。 ごめんな。

俺には、他に手段が見つからなかった。

グロスケさんからリクでした。モブミサ。 受けできるんだコイツΣ( ̄□ ̄;)

2010/01/02:ソヨゴ


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