ガチで危ないです。本当に。自己判断でお願いしますね、責任は取れません。
「なぁ柳、お前さ。」
「ん?」
「男に犯されたこと、あったりする?」

ヒトリの執着。

金曜日の夜中。悠くんが合宿でいないので、たまには泊まってかないかと柳に誘われた。お互いに風呂にも入って、まぁそろそろヤんのかな、みたいな時間帯。
「いきなり何だよ。」
「あーいや、ちょっと。」
「___さっきニュースで、レイプ特集やってたからか?」
「え」
「図星、か………単純だなお前。」
呆れたようにため息をつくと、柳はぼんやりと口を開いた。
「まぁ……あるにはあるけど。」
「……えっ、あんの?お前、が?」
あぁ、と柳は軽くうなずいた。大したことでもないと言いたげに言葉を紡ぐ。
「中三の時、塾の先生にな。無事合格して、もう塾に来るのも今日が最後、そんな日に。」
「…………へぇ。」
「いきなり床に倒されてさ。まぁ、ヤった後に我に帰ったみたいで必死に謝ってきたけど。」
「警察には届けた?」
「いや。大した証拠もなかったし、何より早く忘れたかったから……今思えば、届けぐらい出しておけばよかったかもな。」
他には特に何もない。
言うと、柳は黙ってテレビの方を見た。
へぇ。ふぅん。そう、ですか。
ふつふつと、とある感情が湧き上がってくるのを感じた。使うこともあるかな、そう思ってポケットに入れておいた錠剤を取り出す。規定の量より一粒多く。
「___柳」
呼ぶと同時にテレビの電源を切った。
「ん?何だよ」
こちらを向いた柳の口に右手を突っ込んだ。そのまま倒れていく柳が抵抗しないうちに素早く錠剤を滑り込ませる。右手を引き抜くと、柳は激しく咳き込んだ。
「……ぐは、ミサワ、いきなり何するんだよ!!」
上体を起こして怒鳴る柳に、冷めた目で迫ると、柳は少しだけ怖じ気づいた。
「何、だよ……何でそんな目、」
「即効性だから、な。」
問いには答えずに、唾液で濡れた右手を喉から腹までするりと這わせた。VネックのTシャツを着ている柳は、指が胸元を通過した時にほんのわずか呻いた。
「そろそろ効いてくる、かな。」
「は?何がだよ_____っ!?」
がく、と柳は崩れ落ちた。あわてて手をつき直す。その息は、ひどく荒い。
「な、なん、だよ、これ……ミサワお前、何飲ませた?」
「お利口さんのお前なら、もう察しはついてんだろ?油断してんじゃねーよ。」
「おま、えっ……」
強く睨んでくる柳をドン、と突き倒す。受け身も取れずに背中を打ち付けた柳の首の後ろに手を回して持ち上げ、俺は無防備な両手に手錠をかけた。これも持ってきてたヤツだ。100均のおもちゃだけど、今の柳には、外せない。
柳の腿とふくらはぎの間に手を差し入れて持ち上げ、ベッドの上にその体を落とす。
柳の上に馬乗りになる。両肩を押さえつけると、柳は怒りのこもった目で俺を見た。
「おい、ヤるならヤると言えよ。いきなりこんな乱雑に、」
「あの、さぁ。」
いつもとトーンの違う声に驚いたのだろうか、柳は動きを止めた。
「お前、今自分が置かれてる状況、把握してる?」
「は?」
「お前、今から俺にレイプされるんだぜ。」
「____え?」
冗談だろう?そう言いかけた柳の口を手で塞ぐ。俺は乾いた笑いを浮かべた。
「お前犯されたことあんだろ?だったら平気だよなあ、今から俺がお前に何しても。」
「ん……んっ……」
「大人しくしてろよ?俺、お前がぐっちゃぐちゃになるまでやめねーからな。」
手を放し、その手で柳の胸倉を掴んで引き上げる。反動で首をのけぞらせた柳の喉仏に浅く噛みついて舐め回すと、柳は小さく喘ぎ声を出した。
「あ、うぁ、ミ、ミサワ」
「何だよ」
「何だよ、じゃ、なっ……何で怒ってんだよ、お前」
「怒ってねえよ」
「怒ってるだろ!何、で、お前が、怒るんだよ。俺達、恋人でも何でも、ないだろ」
うるさいな。
イラついた。柳の体を俺にもたれかけさせて、今度は柳の首の後ろを舐めあげる。
ひああ、と柳は大きく喘いだ。元々首の後ろは弱いが、今日は薬も上乗せされてる。
「や、やめ、苦しい」
「言ったろ、やめないって。話聞いてた?お前。」
「ミサワぁっ」
柳はいつもより力のない声で続けた。やめろよ、今日のお前、何か、怖いよ。
「恋人でも何でもない?あぁそうだな、そりゃそうだよ、でもさ。」
「ああっ、あ、」
「俺はお前に執着してんの。お前の喘ぐ声もヤってる時の顔も俺だけが知ってたいんだよ。」
「知ってるの、は、お前だけ、だろ」
「嘘ついてんじゃねーよ。その塾のセンセーとやらも知ってんだろ?なあ?」
またベッドの上に柳を押し倒して、その顔を見る。頬に一筋二筋、涙の跡が残っていた。
「はは……泣いてんの?お前。初めて見たな。柳、お前さ、そのセンセーとやらの前でも泣いたか?」
「っは、」
「言っとくけどさ、今のお前、嘘ついたらすぐ分かるからな。」
低い声音で尋ねると、柳はその瞳に怯えを走らせてから目を反らした。
「____少しだけ。」
「ふぅん。」
あっそう。つぶやくと、柳はまた俺の目を見た。
「でも、本当に少しだけ、だ」
「少しとか少しじゃないとかそういう問題じゃねえんだよ。お前の泣き顔をどこの馬の骨とも知らない他の野郎が知ってるって思うだけでイラつくんだよ。」
柳、お前さ、柳のくせに、何で他のヤツに犯されてんの?ふざけんなよ。
Dキスしながらズボンを脱がせる。ついでに下着も脱がせてしまうと、大きめのシャツが覆い被さった。ああ、これ俺のシャツじゃん、柳に貸しっぱなしの。同時に、貸した日のことを思い出した。
「お前さ、覚えてる?このシャツ俺が貸した日に、冗談半分で買いにいった、アレ。」
「え?あ、___イ、イヤだ、待って、」
「いい機会だから使ってみるか?」
逃げんなよ?逃がさねーから。言い聞かせてベッドから降り、バッグの中からソレを取り出した。ローションを塗ってまた柳の上に乗ると、柳はその目にはっきりと恐怖を映していた。
「ひ、あ、イヤだ、」
「お前の意見とか聞いてないから」
「イ、イヤだ怖いよ、だって、そんなもの挿れられたことなんて一度も………クスリのまされたのも、こんなに喘がされたのも、初めてなの、に」
「へぇ、でもなぁお前、嘘吐きだからな。」
待って、本当、本当なんだ。確かに俺は嘘吐きだけど、でも、本当だ、信じてくれよ。
今にも泣き出しそうなその声を聞くに、柳は嘘はついていないのだろう。それぐらい分かるけど、でも、知ったことじゃない。こうなったら誰にもやられたことないくらい、怖い思いをさせてやる。
「あっは______信じねーよ、バーカ。」
「っ、ミサワぁ……なんで………」
とうとう泣き出してしまった柳のその苦しそうな目に、良心が痛まない訳でもないけど。一気に玩具を中に入れてスイッチを押すと、聞いたことのないくらいあだっぽい声が柳の口から漏れた。
「あ、ああ、うぁああ、なんで、こんな、こと」
「何だよ?」
「俺、何にもしてな、いのにっ!!」
分かってんだよそんなこと。これはただの八つ当たり。でも。
俺は答えずに、玩具を思い切り押し込んだ。柳は鋭く喘いで、数秒後に、果てた。
柳は膝を立てていたから、精液が柳の太ももにもろにかかる。手錠を外す。俺が柳の上から退いて玩具を抜き、バッグにしまうと、ひざがずるずるとベッドの上に落ちた。
柳のすすり泣く声が聞こえる。俺は柳の方を見ず、イラ立ちを隠そうともしないで追い打ちをかけた。
「何泣いてんの、お前。犯された時のこと、どうでも良さげに話してたくせにさぁ。」
言うと、柳はいきなり大声を上げた。
「っ、ふざけんなよ!!!」
柳の大声なんて初めて聞いた。驚いて振り返ると、柳は起き上がり肩をわななかせていた。
「じゃあお前は、信頼してた人にいきなり犯されても平気でいられるって言うのか!!?俺が本当にどうでもいいと思っているとでも!!?俺だって人間なんだよ、感情くらい人並みに持ってる!怖かったんだよ、怖かったしつらかったんだ、だから思い出さないように、ああいう言い方したんだろ!?それなのに、それなのにお前はっ!!何泣いてんの、だって!?俺を何だと思ってるんだよ!!くそっ……ましてやお前のことは、あんなヤツよりずっと、ずっと、信頼、して…………」
そこから先が声にならない。俯いて、声を出さずに泣く。それでも漏れてくる嗚咽に、さすがの俺も胸が痛んだ。
「……柳。」
近付いて肩に手を置くと、ばしっ、と勢いよく払いのけられた。その手が、震えている。
「____ごめん。」
「……本当に、悪いと思ってるのか?」
「うん。___本当に。」
机の上に手を伸ばし、空のガラスのコップを叩き割る。音に驚き体を震わせた柳に、ひと際大きい破片を握らせ、その切っ先を、俺の首筋に当てさせた。
「___許せなかったら、殺してもいいぜ。」
柳はぎゅ、とガラスを握りしめると、その破片を放り投げた。殺せる訳が、ないだろう。そう言って。
「………サンキュ。」
「……別に、礼を言われるようなことじゃ、ない。」
「ごめんな。本当ただの八つ当たりだった……俺さ、お前が思ってるよりはずっとお前のことが好きなんだよ、縛り付けておきたくなる、ぐらいには。だからすっごく、イヤだったんだ。」
許してくれる、か?
聞くと、柳は俯いたまま顔を背けて、許すよと言った。構わない、今日のことはもう、忘れる。でももう二度と、こんな思い、したくない。
「____分かった。俺、コーヒー入れてくる。」
風呂も沸かしとくよ。言い残して部屋を出た。ごめん、本当サイテーだ、俺。


ぼす、とベッドに横倒れになる。太ももが目の前にある。うわ、ねとねとしてる。早く風呂に入って洗い流したい。
ミサワの言葉を思い出す。縛り付けておきたい、か。
「………アイツとなら、一緒にいても許されるだろうか。」
もうこんなことされたくはない。およそ二十年間生きてきたが、こんなに誰かを怖いと思ったことはなかった。けど、それが、執着に起因すると言うなら。
___俺は、一人きりではなくなるだろうか。
薄ぼんやりととろけた頭で、俺はそんなことを思った。
ひどいことするお兄ちゃんにもひどい目に遭っていただこうかと。あれ兄ちゃんの方がひどい目遭ってね?かわいそうじゃね?
大人同士だとどうしてもエロくなります。

2010/09/28:ソヨゴ


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