「真白、君また遅刻?」
「おはよーございまぁす」
「もう昼だよ」

等価交換、オマケの一個。

「君テレポーターじゃなかったっけ?どうしてその能力で遅刻できんの」
「登校時刻は寝てっからなぁ」
「はなから間に合う気ない訳ね」
ごめんなさーい柊センセ。僕は平謝りして席についた。
「まぁもういいけどさ………君このままだと単位危ういよー」
「えっ留年?」
「そう留年」
えっそれは困る。 困るじゃないでしょ。
「毎日のように遅刻しといてよく言えるねそんなことが。出席日数そのものが危ういっつの。」
「見逃してよーセンセ」
「俺の一存じゃどうにもねえ……」
そりゃ、この学校じゃあ一教師に過ぎないけど。 と、僕は思う。本当はあんた、何だってできるじゃん。
「柊センセ神様なんでしょ?」
「え?まぁそうだけど。」
「じゃーどうとでもなるじゃん。おねがーいセンセ。」
「おねがいっつわれても。今からがんばればいい話でしょ?」
先生らしい真っ当なご意見だけども、それができないから頼んでいる訳で。
「かわいい教え子の頼みなんだからさぁ。」
「君のどこがかわいいのか百文字以内で簡潔に述べて。」


「じゃあ今回は見逃してあげるよ。」
アイスクリーム屋にて。僕と柊センセーは二人でアイスを頬張っていた。
「結局食べ物につられるとか、なんだかんだ安いよねセンセ。」
「安いってなんだよ神に向かって。取り消すよさっきの約束。」
「えーそれは困る。」
あの後しばらく粘って僕は、アイスをおごる代わりに出席日数には目をつぶるという約束を取り付けた。 だって早起きできないんだもん。
「まあアイス美味しいから、もう何でもいいけどね。」
柊センセは呟いて、また一口アイスをかじる。 柊センセの暗めの赤い髪が、太陽で少しきらめく。
僕は横目でセンセーを見ながら、クッキー&クリームを舐めた。
「センセーって、本当に美味しそうに食べるよね。 アイスそんな好き?」
「超好きむっちゃ好き愛してる。 アイスは素晴らしいよこんなおいしい食べ物はないね。」
ふぅん。適当に相槌を打つ。聞いては見たけどそんなに興味ない。
「君って本当失礼だよね」
「へ?」
「へ? じゃないよ俺神様だよ?思考ぐらい読めるっつの」
興味ないならはなから聞くなよ。 先生はそう言って、また一口、ホッピングシャワーをかじる。
「だって話題ないんだもん」
「生徒と楽しくご歓談したいなんて思ってないよ、黙って食べればいいじゃない。」
「それでもいーけど気まずいじゃん。」
「おお、君が気を遣える人間だったとは。」
僕のことなんだと思ってんのさ。 腹立たしい教え子。
「うわっ辛辣」
「表情ぴくりとも変えないでよく言うよ。 あ、アイス溶けそうだよ?食べないなら食べちゃうぞー」
「だめー僕が食うー」
溶けかかったところを慌てて舐めあげる。あんまりにも冷たいと口の中痺れちゃってどうも駄目で、僕はアイスをかじれない。
センセはつまらなそうに息をつくと、黙って外を見つめた。 その瞳は少しだけ、遠い場所を見つめていて。
「? センセー、遠い目しちゃってどーしたの。」
「いや…人、だなぁ……って。」
「人ぉ?」
僕もセンセと同じ方向を向く。都会の五時過ぎは沢山の人々が歩き回っていて、なるほどそれは人の群れだった。
でも、だから何?
「人がどしたの、センセ。」
「忙しないなぁ、ってね。 せっかく生きてんだから、もっとゆっくり楽しめばいいのに。」
余計なお世話じゃないの、と思った。けど、先生の目が、何故か少しだけ寂しそうだったから____僕は、何も言わないことにして。
「___センセー、お代わり欲しかったりする?」
「え? いやまぁ一個じゃ足らないけど。」
「じゃー食べようよ。 さすがにおごれないけどなぁ、僕学生だし。お小遣い少ないし。」
だっておにーさん、僕に全然くれないんだもん。 少し口を尖らせると、柊センセは僕を嗜めた。
「まあまあ、いいお兄さんじゃない。それに俺だって苳にはあんまり小遣いあげないよ」
「それは薄給だからっしょ」
「イヤなガキだねお前は」
おにーさんなんて教育実習生だから全然稼いじゃいないんだけど。 そーいえば、苳さんも学生さんだよね。僕と違ってすっげー真面目な。
「ねーねー苳さんってかわいいよね。」
「君はいきなり何言い出すの」
「素直だなーっていうか和むっていうか。いー子だよね」
「俺に対しては生意気だけどね」
「それはセンセに問題があるんだと思う。」
だって苳さんむっちゃ優しーもん。 僕が付け足すと、柊センセは不満げに頬を膨らませた。 いい年なのに似合うのは何でかな。
「何?俺は慕えないってこと?」
「まぁ苳さんからすりゃそうなんじゃねぇ? 分かんねぇよ僕苳さんじゃないし。」
「ヤなガキだなあ」
まぁまぁ、そう言わず。 僕は機嫌取りをしようとアイスのメニューを引っ張り出す。二人で一緒に覗き込む。
「えーっと……じゃあ俺キャラメルリボンにするわ。」
「ういー」
店員さんに指図する。キャラメルリボン、レギュラーサイズで。
「あれ? 君は食べないの?」
「だって金ねーもん。別に一個で十分だし。」
程なくしてキャラメルリボンはセンセの手元にやって来た。けれど何故だかセンセーは、口を付けようとはしない。 「? センセ、どーしたの?食べないの?」
「君食べる?これ。」
センセはずいっとアイスを差し出した。僕はちょっとだけ戸惑う。
「へ、何で?これセンセー用じゃん。それに元々、センセにおごる為に来たんだし、」
「じゃあ半分こする? 何か変じゃん、教師だけ食べてるのって。」
「___別にいいのに。」
何だかんだ優しいなぁ、センセ。 僕はこっそりそう思いながら一口貰った。
二人で少しずつ、食べる。アイスを食べきる頃には、もう外は暗くなっていた。


「真白、」
「なにー柊センセ。」
「いやちょっと思ったんだけど。男二人でアイス食べてんのって、ハタから見ると………アレじゃない?」
「あ」 

オチ弱いななんか……学パロですん。柊先生ハスハス///////社会の先生かなぁとか妄想したりして。
締め切りすぎちゃってごめんなさい;;;;; 柊さん大好きですはうはう(*´д`*)
萌え共有コラボ!企画、個人編でした。お借りいたしましたのは、
朱音様宅「BLANK」より、柊さん。それからお名前だけですが、苳さん。
そして共演させていただきましたのは、「カミサマkidding」よりうちのキチ*イ、真白許人でした。
うへへ柊さん、難しいけど書いててとっても楽しかったです。ではでは!!

2010/01/16:ソヨゴ
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