微グロ注意。


「_____あー、イライラする。」
ムカつくイラつく、理由なんかない。とにかく心がぐちゃぐちゃして落ち着かない。
「じゃあ、楽になりますかぁ………なんてな。」

ヒトゴトcutting

チェーンソーを手に取り、ゆらり、立ち上がる。屋上から見回した街はいつも通りくすんでいた。
空が灰色だ。雨が降るかな。
「んじゃ、今日も楽しく殺るとしますかぁ。」
スイッチを入れる。その心地いい音を聞きながら、僕は屋上から飛び降りた。


「な、何なんだよお前!!」
目の前の男が叫んだ。何なんだよっていわれても、僕は僕でしかねぇし。
まぁ、僕が何者であろうと、お前は今から死ぬんだけどな。
チェーンソーで斬りつける。肉ががががががって削れて血が派手に噴き出す。シャツがまた血で濡れた。スカッとする。鼓動が高まるこの瞬間が、好きだ、好きだ、好きだ。
きゃーーーっていう誰かの悲鳴。うー、キンキンする。耳が。うっぜ。
「………騒ぐなよぉ、うっせーなぁ」
女の喉元をかっ切った。顔に血がぶっかかってちょっとうざい。
掴み掛かってきた男の頭にチェーンソーを突き立てる。がりごりががぎゅりって骨の砕ける音がする。堅い感触がが不意に消え、ぶよぶよしたものを引っ掻き回してる感覚が手に伝わる。イノチを奪うとか奪わないとかそんな倫理は知ったことじゃねぇ。何か形のあるものを、何か存在しているものを、ぶっ壊す、終わらせる、その一瞬がたまらなく心地いい。
コントロールできずに笑いが漏れる。楽しい、楽しい、面白ぇ。
「っ、くっ、あああああああああああああああああ、ははははっ」
オカシイ、オカシイ、心地いい。うっは僕くるっちゃってるぅ!!やっべ超楽しい。
髪に血がこびり付いてる。乾いてる。鉄の匂い、生き物の匂い、憎くて愛しくて鬱陶しい何か。
イノチ、そのもの。
殺す瞬間、そのたった一刹那だけ、僕はイノチを愛しく思える。愛しいと思うのは気分がいい。だから好きだ。
斬りつけて露出した血管を掴んで引っ張ってぶっちぎる。手は元の色が分からないくらい真っ赤っか。温かい。ぬるい。
ショーウィンドウに自らの姿が映る。ああキチ○イってのは誰の目にも分かるもんだな。
スキップしたい気分だったが、似合わないのでやめておく。気付けば周りには立ってるヤツが居なかった。
「うわああああああああああああああん」
あ、一人居た。
小さなガキが母親らしき女の体をゆさぶって、泣きついている。
近寄ると、ガキは僕を振り返って泣き叫んだ。
「なんで!?なんでママを殺したの!!」
「は?近くにいたから。」
「そんな理由で人を殺していいワケないじゃん!ひどいよ!!ねえ、何かいってよ!!」
いいワケない?んなの誰が決めたんだ?どこの誰とも知らねえヤツが勝手に決めたルールをなんで僕が守んなきゃなんねーんだよ。
どうして理由が必要なんだ? 何に言い訳してるんだ?
「うっせーなぁ、僕は僕のしたいよーに生きんだよ。」
ガキの首を飛ばす。うおすげ、ガチで噴水だ。何かシュールなポスターみてぇ。
さーて、んじゃあ帰るとすっかな。
チェーンソーのスイッチを切り、ぐーっとのびをする。帰ろうとして一歩進んだ瞬間、背後から声が懸かった。

「____真白」

「____栞田」
最近よく遭うなぁ。
鼻で笑うと、栞田は微かな嫌悪感を表に出した。
「そーだね……まったく反吐が出るよ。」
「おいおい、カミサマともあろうお方が随分汚ぇ言葉使うんだな」
「どうでもいいよ。俺の知ったことじゃない」
僕は栞田の目の前まで寄った。チェーンソーを落とす。がちゃん。
見下ろすと、栞田もまた俺を見上げた。
「………相変わらず背、でかいね。」
「お前が小っちゃいんだろ。」
「両方でしょ。」
はぁっ、と栞田は短く息を吐いた。
「____俺さ、そこで倒れてる女の人、知ってるんだ。」
「ん?コイツ?」
栞田の目線を辿る。肩から胸にかけて斬りつけて殺した女。
「その人は俺の熱狂的な信者でさ。弟さんが病気で、でもお金がなくて、朝も昼も夜も働いて、弱音も吐かずに」
「へぇ、だから何?」
言うと、栞田は僕の胸倉を掴んだ。
「君さ!!何の権利があってこの人を殺したの!?今までの殺人の中に一つでも明確な理由があった!!?ねえ!!」
「………んなもん、あるワケねぇだろ?何ムキになってんだよ_____うざってぇなぁ!!」
栞田を地面に叩き付ける。頭を強く打ったというのに、何の反応もない。
当たり前だ。コイツには“痛覚がない”。
栞田の首に両手を合わせ、思いっきり締め上げる。息が詰まったのか、栞田はかはっ、と唾液を吐いた。
「あのなぁ、誰だっていいんだよ殺すヤツなんて。死んでいいイノチなんてないなら誰殺したって一緒だろ?僕は誰にも指図されたくねぇんだ。お前にも、あの軍人にも、他のその他大勢にもなぁ。僕は僕のしたいようにすんだよ、好き勝手生きるんだ、お前ら全員何耐えてんだ?何我慢してんだ?何に遠慮してんだよ、バッカじゃねえの。くだんねーだろ”倫理”だなんて、んなもんに縛られてんなよ。僕は黙って耐えたりしねぇぞ、絶対耐えたりしねぇからな。」
手を放す。激しく咳き込む栞田から退き、チェーンソーを手にとった。
「お前が痛みを感じられるようになったら、僕はコイツでお前のこと殺すからな。殺したいから殺すんだ、理由なんかねーぞ。」
「____っ、君は、オカシイ。」
間違ってる。
吐き出すように返した栞田に、僕は皮肉な笑みで答えた。
「あっそ、僕はオカシイまんまがいいんだ。」
だってその方が楽しいんだもん。
あははははは、と短く笑って、僕はその場から消え去った。


ちょっとグロかったかしら。真白に色々託しました。

2010/09/30:ソヨゴ
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