「今日はあなたにとって、最悪な一日になるでしょう。」
 オレは今朝、予言少女にそう宣告された。

残念でした、

「………え、マジで?」
「マジで。」
 うっそぉ、と俺は電話口で応える。 朝からひどくイヤな気分だ。
 俺の幼なじみ須藤有沙は、予言少女とあだ名されてる。実家が寺なもんでそういう力があるとかないとか、___まぁ実際は、当たりすぎる占い程度の能力でしかないんだけど。
 しかし。
「お前の予言って、悪いのばっか当たるんだよな……」
「そうだね。 残念でした、章介さん。」
 じゃ、また学校で。
 途切れた電子音に取り残される。 最悪なモーニングコールだ。


「章介ー、一緒に帰ろう?」
「……よぅ、有沙。珍しいな。」
 お前が俺のこと待ってるなんて。返すと、有沙は愉快そうに笑う。
「今日どんな目に遭ったのか、詳しく聞き出そうと思って。」
「それで部活終わるまで待ってたのかよ?帰宅部のくせに。」
 このヒマ人め。 ヒマ人で結構。
「で?で?どうだった?」
「___んな面白い話でもねぇぞ?」
 要約すると。
 教職が焦げてタイヤパンクして電車遅れて酔っぱらいに絡まれタッチの差で遅刻し体育着忘れて授業後にロッカーで見つけてaと9の間違いで追試決定で好きな先生が風邪引いて代わりに来たのが部活の顧問で弁当の中身も焦げまくってて携帯落として液晶割れて部活行ったら靴ひもが切れて一言でいうと散々だった、です。
「………」
「オイ笑うなら笑えよ」
「ぶっ___きゃははははは!何それ予想以上!!」
 腹を抱えて有沙は笑う。赤いカチューシャが髪の上でズレた。 このやろ、他人事だと思って。
「予言しといてひでぇ態度だな!」
「こんなに的中するとは思わんだ、ぶはっ、やばい死ぬ、」
 じゃあ私の予言どおり、今日は最悪だったってワケだ。
 有沙が涙目を拭いつつ言った。____だけど。
「……いいや。悪いがその予言、大外れだったぜ。」
「え? 何よ強がり?」
 有沙は勝ち誇るようにせせら笑って。 へっ、そんなカオしてられんのも今のうちだ。
「今現在、俺は幸せです。全部ひっくり返るくらいな。」
「……どうしてよ。」

「お前と一緒に帰れてるだろ?」

 残念でした、有沙さん。
 茶化すように付け足す。安い幸せねと彼女は言った。 そのカチューシャのような顔色で。

こっぱずかしい学生恋愛パート2。

2011/03/28:ソヨゴ
inserted by FC2 system