スーツ姿のその青年は、冷えた表情で携帯を覗き込む。 液晶画面が頬を照らす。
「…………使えねぇな、さすがは窓際族。」
どうやらミスの報告らしい。相手は年上の部下、のようだ。心の底から蔑んだ笑みで彼はパチンと携帯を閉じた。
「負け組、っているもんだよなぁ____カワイソウに。」
見下すように唇を歪める。表情こそ違えど、その顔は………その、顔は。

殺意を呑んで。

「カーティスさん。」
名を呼ばれ彼は振り返った。 どうした?
「さっきベーカーさんからメールが____って、届いてましたか。」
「把握済み把握済み。相変わらず役に立たないクズのような人間だな、彼は。」
愉快そうに笑うカーティスとは裏腹に、彼の部下と見られる青年は、気まずそうに俯いて。
「お前はああはなるなよ?負け組ってのはいつ見ても哀れで反吐が出る。ま、お前はできる人間だもんな。そうはならないと思ってるけど。」
「ありがとうございます。………でも、ベーカーさんは悪い人では、」
「イイ人ですよーってか?性格?それが人間の価値か?」
そんなもの何になるんだ。 カーティスは鼻で笑う。
「心根も性根もソイツの価値にはならないよ、馬鹿は一生馬鹿のまま、落ちぶれて生きていく。クーデターと同じだ。」
「………」
「迫害されるものは死ぬまで迫害されるんだよ、出来ねぇヤツは使えねぇ、負け組は負け組、未来なんてないさ。 そーいうヤツは見下していんだよ。」
黙り込んだままの部下に、カーティスは逆撫でするような笑顔を見せた。
「使えねぇヤツは死んじまえばいいんだ。 生きてても、意味、無いよ。」

「カーティスさんって、一人っ子ですか?」
「ちげーけど?いきなり何だよ。」
「いえ、何となく。 じゃああれですか、弟さんとか?」
「妹がいる。 弟は____そういや、いたなぁ。」
いた? いた。
くっくっと、喉を鳴らすようにカーティスは笑った。部下は真意が読めずに戸惑う。
「いた、って……あの、もしかして死んでしまった、とか?」
「さぁな?俺は知らねぇよ。死んでりゃいいと思うがな、つか野垂れ死んでんじゃないの?クーデターだったからな。」
本当は、殺そうと思ってたのに。 彼は苦々しげに吐き捨てた。
「逃げやがってよ、アイツ_____元気にしてたらしてたで面白ぇけどな?死に損ないの分際で。」
「………弟さん、お嫌いですか?」
「嫌いに決まってんよ、あんなゴミみたいなヤツ。」
ゴミ、って。 仮にも弟さんでしょう?
部下は少々、ムッとしたような声を出した。 仕事では尊敬してるけど、やっぱりこの人、最低だよ。
「弟?弟だぁ?___はははっ、」
「___カーティスさん?」
「あははははははははははは、ふはっ、あははははははははははははははは!!!」
カーティスは大きく高笑いした。部下はその声にぞっとする。 頭おかしいみたいな、声。
「弟?アイツが?アイツごときが俺の弟? 馬鹿馬鹿しいふざけんじゃねぇぞ。」
睨みつけるように、馬鹿にするように、彼は瞳を歪ませる。
「血がつながってるなんてあほらしい、あの罪人風情が弟だったなんて今考えても吐き出しそうだ。 」
低くうなるように吐き捨てる。と、カーティスは____兄は路上の花を踏みつけた。
「今後一切、俺の前で弟との話はするな、潰すぞ。」


「____みーつけた。」
こんなところにいたんだ。 アーネストは、双眼鏡から目を離した。その表情は、普段の彼からは想像もできないほど……醒めていた。
「………相変わらずだな、兄貴。」
いいんだ。構わない。今は殺さない。でもいずれ、いずれは、貴方は。 逃がさない。
指で銃の形を作る。標準を眼下のカーティスに合わせながら____弟は、その瞳から光を消した。
「死んじまえ、兄貴。」

とりま。カーティス・シザーフィールド。レンドのお兄さん、性格最低。 顔はそっくりです。

2010/01/15:ソヨゴ
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